真実の瞬間

2010年9月11日 日本歯科評論掲載

新しい歯科医療の構造

今日の歯科医療を取り巻く問題は、不況という経済環境の問題ではなく、歯科医療界における基本的構造の経年変化に過ぎない。数学的に、いずれは答えの出る問題である。もちろん地域差が加味されるため、体感速度は、地域によって15年程度の差が生じるであろう。「君は東京でやっているから、そんなことを言えるのだよ」と、地方で開業している友人に言われることがある。現在の歯科界の構造をピラミッドに譬えると、確かに東京のど真ん中はピラミッドの頂点に位置していて、変化の波に真っ先にさらされる小さなピラミッドなのかもしれない。しかし、今後ピラミッドの4辺が伸びていくとしても、ピラミッドの構造形態自体は変わらない。実感に要するその差は4辺が伸びていく時差だけで、いずれはピラミッドは同じ構造のまま歯科界を覆い尽くす。 歯科の治療でやるべきことはまだまだ山ほどある。歯周病、顎関節、Tooth Wear、咬合力のコントロール、新たな材料での再修復や再補綴など、挙げるときりがない。ただし、いずれも回復的歯科医療であり、ピラミッドの形態、つまり歯科医療の構造は変わらないのである。 一方、アンチエイジングを頂点に巻き起こりつつある"創造的歯科医療"が産声をあげた。その形態は、これまでの回復的歯科医療とは全く異なり、新しい形のピラミッドの建設が始まるのかもしれない。成長段階に達するにはまだまだ時間がかかりそうだが、何年かすると、その様相が日本の空にくっきりと浮かびあがってくるであろう。 近視や老視は治せてもその予防は確立できていない現在の眼科に比べて、歯科は齲蝕において治療も予防も確立できている。われわれにお魔できることと言えば、気高く胸を張り、背筋を伸ばして"真実の瞬間"に備えることをおいてほかにない。 ひとまず、ここはアナクロニズムなドン・キホーテに浸りながら"風"を読むとしよう。


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